2017.01.16

【そうだ、翻訳会社を選ぼう!】

今年最初の記事です。というわけで今更ですが、明けましておめでとうございます。毎年、この時期というか三が日は国内の取引先からは打診がないこともあり、確定申告に備えてレシートや領収書の整理、帳簿付けをせっせとしています(毎年のこと、そして既に10数回目の作業とはいえ、決して楽しいものではありませんけど)。

とはいえ、昨年の売り上げをひとまとめにして見ていると、ときには面白い発見もあります。ちなみに去年の取引先は、全部で15社でした。内訳は、国内が6社。残り9社が海外(米国が7社、欧州が2社)。

何気なく取引先を見ていると、あることに気が付きました。それは、夏以降、ある取引先(国内)の比重がグーーーンと上がってることです。

で、あることを思い出しました。

このお取引先、登録したのはおそらく5年以上前だったと思います。登録当時、何度か打診をいただいたり、ぽつりぽつりと散発的に受注していたような記憶があります。

では何故、この会社との取り引きが活発化したのかといいますと、ある2つの出来事がきっかけで、
私の心の中で変化が生じ、

「この会社と仕事をしたい!」

と強く思ったからです。

その出来事①

夏頃、ある案件で打診をいただきました。とてもやりがいのある分野で受注を前向きに検討している段階で、「参考資料」なるものの存在が明らかになりました。昨年の翻訳祭でも、この「参考資料」の是非が問われる場面もありましたが、実はコイツが往々にして「やっかいなヤツ」なんです。一言で言うと、

「今回の翻訳作業時には、過去に他の誰かが翻訳した既存訳に出来る限り沿って(再利用する形で)作業して欲しい」

というリクエストなのです。

御多分に漏れず、この際も「ネイティブがチェックしたものは既存訳を利用して欲しい」というリクエスト付きでした。しかも、エクセルファイルでの支給です。

これには正直悩みました。何故なら、用語や言い回しも一部制限されて既存訳順守の作業となると、通常の作業よりも時間がかかることが想定されますし、都度、エクセルファイルで原文と訳文をにらめっこして既存訳を拾ってくる必要が生じるからです。

そこで、ある1つのことを先方に提案しました。

「この既存訳をすべてTM(Translation Memory)に取り込んで、その上で支給してもらえませんか?」と。
その出来事②
 
先にも書きましたが、私は海外の取引先とも頻繁にやり取りしています。海外の取引先の場合、ほぼ100%の割合で作業開始前にPO(発注書)が発行されます。作業を開始するにあたり、このPOがあると非常に助かります。何故なら、私の場合、合計金額とワード数を確認した上で、受注の可否を判断したり、スケジューリングするからです。

最近はあまり聞きませんが、翻訳会社の中には、例えば英日案件の場合、「訳仕上げ文字数」で作業費を算出する会社もありますが、この場合、はっきりした金額は作業が終わらないと出てきません。この算出方法に慣れていらっしゃる方もいるかと思いますが、私はダメです(よって、訳仕上げ換算の会社とは疎遠になる傾向があります)。

で、件の会社に戻ります。この会社では普段、POを発行していない様子でした。これまでの経験上、国内の翻訳会社の中にはこのPOを発行していないところもあることは承知していましたが、いつものように、「(金額とワード数が分かる)POまたはそれに代わるモノを事前に発行していただけますか?」とダメ元で依頼してみました。
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さて、この2つのお願いがどうなったのかと言いますと、結果的には、どちらもご了承していただきました。しかも即座に。

翻訳者によって、自分が作業しやすい環境、条件というのはきっと千差万別だと思います。私のように翻訳会社にお願いするまでもなく、支給されたデータを元に自分でTMを作成して管理される方もいらっしゃるでしょうし、POなんて不要と言う方もいらっしゃると思います。つまり、「作業しやすい環境」というのは人ぞれぞれです。自分の希望する環境や条件を叶えてくれる取引先を探すのも1つの手でしょうが、こうしたものは自分で整えていく必要があると実感した次第です。もちろん、こちらの言い分が通るときばかりではありません。でも、自分の作業しやすい環境を整えるのを最初からあきらめて、「あの取引先は….」なんて恨み節を言うよりは行動に移す方が健全ですし、自分で自分の道を切り開いていく感(というと少し大げさか?)があります。

こうした周辺業務を先方にお願いできるということは、より翻訳作業に専念でき、先方からの依頼を断らずに済むことにつながります(つまり、Win-Win の関係がここに誕生します)。 この件を通じて、単純かもしれませんが、私はこの会社の仕事を優先したい、無理してでも引き受けたいと思うようになりました。

翻訳関連の書籍やインターネットの情報を見ていると、あちこちで「こういう翻訳者が選ばれる!」的な記事を目にしますが、私たち翻訳者も翻訳会社同様に「翻訳会社を選ぶ権利や自由」があります。いい仕事をしてきちんと評価してもらうことが、結果的には正当な報酬につながり、健全な信頼関係を構築し、個人事業を継続していくことができます。 

自分のやり方に100%マッチする取引先なんてマズありませんよね。だったら、自分でコツコツと作っていきたいものです。ちなみにこのお取引先には昨年ご挨拶に伺い、普段やり取りしているPMさんを始め、コーディーさんとも顔を合わせることができました。今年もこの取引先のお仕事はガンバリますよ~!