2016.11.03

【翻訳会社の無茶振りに振り回されない】

「トライアル」に時間と労力を費やし、晴れて「合格」→「初受注」となり、継続的な取り引きに発展し、経済的に安定した頃に、「ソレ」は突然やって来ます。
「ソレ」と言うのは、

「時間をかけて構築した取引先との関係が一瞬にして崩壊する瞬間」です。

翻訳業界に限った話ではないかと思いますが、フリーや個人事業主の場合、一度目の失敗は許されることもありますが、二度目の失敗は「取引先を失う」ことを意味します。
翻訳会社と日常的にやり取りするようになると、懇意にしているPMさんやコーディさんから、

その1)
「○○さん、普段とは少し分野が違う案件があるんですけど、お願いできますか?」

とか
その2)
「ちょっと納期が厳しいんですけど、大丈夫ですか?」

とか
その3)
「追加でお願いできますか?(なるべく早く納品希望)」
などの打診が来ることがあります。
このような問い合わせが来ると、単純な私は内心、
 
「おーっ、コーディさん、俺のこと頼りにしてくれて嬉しいなぁ。よぉーし(無理してでも)一丁がんばるか!」

などとすぐに舞い上がってホイホイ引き受けていました。でも、こういう時は頭を冷やして冷静になる必要があります。
=================================================================

詳しく見て行きますと、

その1)
普段取り扱っている文書などとは異なる分野の案件の打診が舞い込んでくるときがあります。自社に、その分野の専門知識を持った翻訳者がいないとか、手配できなかった場合などです。
その2)
とにかく納期重視。スケジュール的には厳しいけれど、複数人で作業するのでなく、例えばマニュアル一冊を一人で最初から最後まで訳して欲しい場合などに発生する案件です。

これを請けると、売上的には良いけど、家事も育児も放棄する上に、土日祝日返上確定、果てには夜翻(日中以外に夜も翻訳作業に追われること)コースか?という日々が待っています。
その3)
「納品したー!」と思ったら、「追加が来たので、なるべく早く(なるはや)で納品お願いします」
と来る案件のことです。
私の場合、いずれの3つのケースでも失敗をしているので、具体的な対処策などをご紹介しますと、
その1の対処策)

まずは原稿内容をよく確認した上で専門分野外であることを伝えます。バックアップ体制(翻訳後のレビュワーさん、チェッカーさんがその分野に明るいまたは専門知識を持っているなど)が整っていることが確認でき、自分で「やりたい!」と思った場合に限り受注します。

その2の対処策)
自分の処理量と納期をにらめっこしつつ、スケジュールについて家族と相談します。同時に、納期の延長が可能か、受注前に確認します。多少の無理はしますが、「ムリ」だと思ったら、縁が無いと思って辞退するか、同業者を紹介したり、先方の了承が得られれば、同業者仲間と分担して作業します。

その3の対処策)
「なるはや」と言われても、担当した案件の続きだと言われても、やはり自分の処理量と納期を照らし合わせて、必要に応じて交渉した上で最終的に受注の可否を判断します。
=================================================================

何故、こんなことを書くのかと申しますと、上記のいずれかを請けて失敗した場合、待っているのは、「取引停止」つまり、「取引先との関係が一瞬にして崩壊する」からです。
納品物について何らかの不備があったり、満足してもらなかった場合、

「普段取り扱っている分野とは違ったから」(→打診・発注した方に責任があると言っても通じません)
「無理をして引き受けたのに」(→「ムリ」をしたのは自分であって、そんな事情は発注者やお客さんには関係ありません)
「出掛けるまたは他の案件の予定が入っていたけど、あまりにもプッシュされる or 他に引き受けてくれる人がいなそうなので引き受けてあげた」(→「~してあげた」というのは言い訳にしかなりません)

という理由はどれ一つ通用しません。その責任は全部自分にあります。

「厳しい納期でお願いしたので、お客さんの求める品質には仕上がらなかったんですよね。仕方ないですよ」

なんて、優しい甘い言葉をかけてあなたの労をねぎらってくれるPMさんやコーディさんはいません。もう一度書いておきますと、責任は受注した自分にすべてあります。

こうした過ちを犯すと、それまでほぼ毎日のように仕事の打診をしてきてくれた取引先を失うことになります。これは精神的にも経済的にもかなりのダメージが残ります。私自身、この失敗を犯し、二週間ほどまったく仕事が来なかった時期があります(既に結婚して、子供もいました)。 

こうした失敗は二度と犯したくないものです。この失敗を機に、学んだことが今回の記事のタイトルということになります。自分で苦労して掴み取ったチャンスと信頼を無駄にはしたくないものですね。