2016.10.21

【国内と海外の翻訳会社のトライアルの違いについて】

少し間が空きましたが、今日は前回の記事(「トライアルに受かって仕事が来なかったときの話とトライアルに落ちて仕事が来たときの話」)の最後で予告しました「国内と海外の翻訳会社のトライアルの違い」について書いてみたいと思います。
まず、「この両者の間に違いはありますか?」と聞かれたら、「あるような、ないような・・・」と答えます。では、どの辺が変わらず、どの辺が異なるのか、思いつくままにまとめてみますと・・・・。
【変わらない点】
◇「(採用者側が)あなたの翻訳スキルが仕事として通用するレベルにあるかどうかを見極めるための採用試験」のような場であること
◇合格したら、取引開始という前提で受けるもの
◇英日の場合、原文ベースで400~800ワード程度の課題が送られてくる
◇無償
◇手が空いたときに、課題に取り組み、完了次第提出

等が思い浮かびます。

では、次に「異なる点」を挙げてみますと・・・。

【異なる点】

1.
★ 日本の場合、課題原稿と共にスタイルガイドが送られてくることが多い
☆ 海外の場合、課題原稿と共にスタイルガイドが送られてくることは少ない

2.
★ 日本の場合、トライアルの審査結果に時間がかかる(最短で数週間~最長で数か月)
☆ 海外の場合、トライアルの審査結果に時間がかからない(最短で数日~最長で数週間)

3.
★ 日本の場合、事前に取引開始時の単価を教えてくれない会社もある
☆ 海外の場合、事前に取引開始時の単価を教えてくれる会社が多い

といったところでしょうか。
では、この3つの違いに、どのような意味があるのかといいますと・・・。

まず、1。
日本国内でも海外の翻訳会社でも、翻訳作業を行う上で、この「スタイルガイド」と呼ばれるいわゆる作業指示書が存在します。が、日本ではこの指示を厳守していないと、まずトライアルには合格できないと考えた方がいいでしょう。誤解を恐れずに書いてしまうと、

いくら高品質の訳文を提供できても、作業指示を守れない翻訳者は不要

ということです。
次は、2。
これについても、先の記事で書きましたが、国内では通年採用型、つまり翻訳者を年中募集している会社が多く、この場合、今すぐ翻訳者が必要なわけではないので、審査作業も後回しになります。

反対に海外の翻訳会社の審査結果が出るのが比較的早いのは、実際の案件型、つまり不定期募集ではあるものの、実際に受注が見込まれる案件で、その分野に精通している翻訳者がいない(または不足している)ために、トライアルを実施している現れと言えるかもしれません。
最後に、3。
これは、日本独自の風習(?)として、「お金の話は最後に・・・」てなケースが多いように見受けられます。海外では、トライアル提出前(つまり応募する前)の時点で取引開始時の単価を提示してくれるところが多いという印象を受けます(ちなみに明示されていなければ、必ず尋ねます)。

だって、時間と労力を費やして、ようやく合格したと思ったら、ワード単価が自分の設定している単価と大きくかけ離れていて、「トホホ…」なんて嫌じゃないですか(何度か経験していますけど)。ということで、個人的には単価については何はともあれ「一番最初」に確認します。

以前は、トライアルで合格するまでは自社の単価を開示したがらない翻訳会社もいくつかあったように記憶していますが、最近はどうなんでしょうね。
最後に。

いくら高品質の訳文を提供できても、作業指示を守れない翻訳者は不要

なんてひどい!話が違う!と思う方も中にはいらっしゃるかもしれません。「翻訳者なんだから、翻訳が素晴らしければいいじゃないか!」という声も聞こえてきそうです。確かに私もそう思っていた時期もあったような気がします。これが例えば、サッカー選手であれば、「サッカーが上手ければ、つまり試合で結果を出していればOK!」となるかもしれません。でも、翻訳の世界では、「翻訳のスキル」というのはあくまでも「優秀な翻訳者」を示す1つのバロメータに 過ぎないと言えます。これは、取引先が国内であろうが海外であろうが、関係ありません。次回はその辺りのお話について書いてみたいと思います。