2016.05.17

【「翻訳者、海を渡る」の巻(3)|英語ができればいい翻訳者/通訳者になれる?】

今回は、「2)渡米前と渡米中の出来事(後編)」です。国内のお客様に出した見積もりに続いて、奥さんからもOKがでました。

というわけで、約8年振りに渡米の運びとなりました。途中、シカゴで乗り換え便に乗り過ごすなどの予期せぬ出来事はありましたが、なんとか24時過ぎにはホテルに到着。

翌朝、7:45にロビーで待ち合わせ。これまで数百通以上メールでやり取りしたお相手と遂にご対面!こうして仕事を通じて知り合った方達と実際にお会いできるのは本当にうれしい限りです。

ちなみに翻訳者の場合、自宅兼仕事場の人が多く、こちらから相手に出向かない限り、実際に顔を合わせる機会は皆無です (私の場合、過去10年間で、取引先の方と実際にお会いしたのはわずか数回という…)。
 

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基本的には午前中は打ち合わせ、午後は過去のプロジェクトの現場見学、デモンストレーションという感じで毎日が進んで行きました。今回はプロジェクトの関係上、大学や病院、スタジアム、フードコード、映画館、アリーナ、カジノなどを見て回りました。観光している時間はまったくありませんでしたが、とてもよい経験になりました

滞在中に痛感したのは、ぶっちゃけ自分の実力不足でした。

もちろん、国内のお客様が相手に伝えたいこと、尋ねたいこと、その他不明点等があれば、それを伝えるのが私の役目ですから、自分が持っているボキャブラリーや知識を総動員して文字通りなりふり構わずに相手に尋ねていきました。

が、一日を終える頃には、「もっとスムーズな言い回しがあったなぁ」とか「あの時、相手はこう伝えたかったんだな」とかアレコレ出てきます。

前回の記事にリンクを貼ったはなさんの記事にもありましたが、通訳は基本「その場勝負」です。その時にどれだけ正確かつ臨機応変に対応できるかが成功のカギを握ります。

いつもの翻訳作業のように、「えーと分からないところは後で調べよう」というのは通じないんですね
(それでもあきらめの悪い(?)私は、現場では伝えきれなかった用語・情報などは書き留めておき、ホテルに帰って調べた上でお客様に伝えるように心掛けていました)。

それから、通訳者としてどのようにして会議を自分なりにコントロールしていくのかも学びました。というのは、会議の冒頭部分では通訳者である私を気遣って、ある程度のところで会話を切って、「はいどうぞ(訳してください)」という時間が与えられますが、話が熱を帯びてくるに連れ、私の存在は希薄になり、双方とも話が長くなります。要点のみを書き留めて、それぞれの相手に伝えるようにしていましたが、これには限界があります。

そんなときには、タイミングを見計らって「ここで少し訳してもいいですか?」と上手に割って入っていく能力が求められます。いい通訳者さんというのは、きっと無理なく自分の存在を主張できて、数ある情報の中から必要な情報を取捨選択して、情報を整理した上で双方の相手に伝えられる人を指すのかもしれません。

この辺りは、翻訳と似ていますよね。つまり、「英語ができればいい翻訳者/通訳者になれる」わけではありません (翻訳者には、専門知識や調査能力の他にもスタイルガイドの遵守、指定CATツールの使用、メール等での迅速なやり取りなどのスキルも往々にして求められます)。

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毎日毎日何かしら、自分の足りない部分に気づかされるわけですから、フツーの方なら「もうだめ・・・」となるかもしれませんが、私はむしろこの状況を楽しんでいました。

何故なら、これまで自分が訳してきた文書の内容(施工方法、製品など)を実際に目にすることができ、分からないことがあれば先方に直接質問することができる機会なんてそうそうありませんからね。同時に、「今回足りなかった部分は次回までに習得してやろう」という気持ちがメラメラと燃え上がってきたのでした。

(続く)