2015.06.12

【ジェフ ヒーリー (Jeff Healey) の想い出④】

その後、何度かジェフを見る機会に恵まれましたが、いずれも Grossman’s Tavern のような小さなバーでのジャム セッションの場での出来事でした。ジェフは大抵突然現れ、白杖ではなく瓶ビールを片手に持っていました。

’95 年に「Cover To Cover」発表して以降、ジェフは彼が愛したもう1つの音楽、「ジャズ」に活動の重点を置いていきます。というより、これはあくまでも憶測ですが、The Jeff Healey Band で華麗にデビューを果たし、その特異な奏法や「盲目」ということでブルーズ シーンで一躍注目を集めましたが、 彼の中ではブルーズは好きな音楽の1つに過ぎなかったのではないでしょうか。ある程度の成功を収めた後、もっと自分本来の姿を臆することなくさらけ出していこうと決めたように見えます。

ジェフはその後、「Healey’s」 というライブバーを開き、毎週木曜日に演奏していました。その活動と並行する形で、毎週土曜日には、「Jeff Healey & The Jazz Wizards」という名義でジャズ(主に 1920~1930 年代のスタンダード曲)を演奏していました。ジェフは、ギターに加え、トランペットも担当していたようです。残念ながら、どちらのお店の前も何度か通ったにもかかわらず、中に入って彼の演奏を聴くことはありませんでした。

ジェフはその後、The Jeff Healey Band 名義では「Get Me Some」を 2000 年に発売し、Jeff Healey & The Jazz Wizards 名義も何枚かアルバムを残しています(後者のアルバムに興味がある方は、Amazon Canada でチェックしてみてください)。

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私はその後、2001 年に帰国しました。「また、トロントに帰ってくればいつでもジェフに会える」。トロントを離れるときはそう信じていました。しかし、別れは突然やってきます。2008 年 3 月 2 日、彼は息を引き取ります。まだ、41 歳という若さでした。

その後、Jeff Healey 名義で何枚かのアルバムがリリースされています。彼の訃報を耳にした後、「ジェフ ヒーリー」の名前を聞く機会はめっきり減りました。でも、もし新しく彼に興味を持った方がおられるようでしたら、以下の二枚のアルバムをお奨めします。

★「LIVE AT GROSSMAN’S – 1994」 by The Jeff Healey Band (2011年)

ライヴ・アット・グロスマンズ 1994

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これは、The Jeff Healey Band がもっともエネルギッシュであったと思われる 1994 年、彼らのホームグラウンドでもあった先の Grossman’s Tavern でのライブを収めた一枚です。「Cover To Cover 」アルバムのリリース パーティですが、Pat Rush(Guitar)、Michael Pickett(Harmonica)といった地元トロントの重鎮ミュージシャンも参加しています。「ジェフ ヒーリー」と聞くと大半の人がイメージする、ハード ドライヴィングなブルーズ ロックがここにはギュッと詰まっています(曲はブルーズのスタンダードばかり)。そして、このアルバムが気に入ったら、ぜひ「Cover To Cover 」も手に取ってください。当時、トロントのブルーズ シーンの第一線で活躍していたミュージシャンがこぞって参加しています(特に、Jerome Godboo がハーモニカで参加している「I Got A Line On You」は必聴です)。

そしてもう一枚はコチラ。
★「LAST CALL」 by Jeff Healey (2010年)

Last Call

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ジェフは、ヴォーカル、ギター、トランペットに加え、プロデュースを担当しています。ブルーズ ロック時代のアルバムとは異なり、彼の温かみのある歌声と演奏が非常に印象的です。「自宅でリラックスしながら、気の合う仲間たちと自分が大好きな音楽(=ジャズ)を演奏してみた」。そんな一枚です。レコーディングはトロント市内のスタジオ二か所で行われていますが、限りなく「宅録」に近いアットホームな音作りとなっています。

最後になりますが、このアルバムの見開きには以下の言葉があります。

「JEFF HEALEY WAS ONE OF THE MOST REMARKABLE MUSICIAN CANADA HAS EVER PRODUCED. HE IS BEST KNOWN THROUGHOUT THE WORLD FOR HIS BLUES-ROCK GUITAR PLAYING BUT HIS FIRST LOVE MUSIC WAS ALWAYS 1920’S AND 30’S STYLE JAZZ.」 

「ジェフ ヒーリーは、カナダがこれまでに生んだミュージシャンの中でもズバ抜けた存在感を放っていました。ブルーズ ロックの名手として世界中にその名前が知れ渡っていますが、彼が最初に心を奪われた音楽は他ならぬ 1920 ~ 30 年代スタイルのジャズでした」

Thank you, Jeff Healey! 

                                                                       完

ps. ラッキーにもジェフに何度か遭遇したにもかかわらず、結局彼に話し掛けることはできませんでした。その理由は、当時は英語にコンプレックスがあったのに加え、相手が「目が不自由」ということで、その勇気が出せませんでした。あれから数十年が経ちましたが、今回こうして記事にまとめることが出来て、ようやくジェフと「会話することができた」気がします。